個性的な名の温泉神社
湯田川温泉は、山形県鶴岡市の奥座敷ともいうべき温泉である。湯田川温泉の大きくはないが、まとまりのある温泉街の中心部に共同浴場正面の湯がある。その道路を挟んだ向かい側にまっすぐ伸びる参道の突き当たりから鬱そうとした林の中の石段を100段ほど上った小高い丘の上に由豆佐賣(ゆずさめ)神社が鎮座している。正面の湯は由豆佐賣神社の正面に位置することから付いた名である。由豆佐賣神社は、由緒ある神社である。拝殿に掲げられた明治40年8月社司石原安明の木額には、古い祝詞に白鳳(日本書紀の現れない私年号。白雉のことといわれる。)元年壬申彌生中旬当山に天下り給うとの記載があり、古老の口碑は、和銅年間白鷺の浴するを見て初めて温泉を発見した、それで湯田川温泉を白鷺の湯と称する、神社の創立もその当時と伝えていると記している。
上記伝承からもうかがわれるとおり、由豆佐賣神社は、白雉元年(650)の創建と云われ、古書「三代實録」や、延喜式神名帳にも記載された格式の高い神社である。すなわち延喜式内社なのである。祭神は、溝織姫命、大巳貴神、少彦名神の三神である。上記木額は、「溝織ハ溝鑿(ミゾホ)リノ義ニシテ専ラ水利ヲ司リ給フ則チ千有餘年ノ古ヨリ此地ニ鎮リ座シテ温泉ニ幸ヒ給フモ亦偶然ニアラサルナリ」とする。「由豆佐賣神社の名前の神社は、全国でここ1カ所にしかない。由豆佐賣とは、水に対する湯の神様を意味する。ちなみに、隣の温海温泉にある温泉神社は祭神が由豆佐賣神で、女性の神様である。」(由豆佐賣神社の元宮司であるたみや旅館の今野悦郎氏)
神社名は温泉神社あるいは湯神社とはなっていないが、まぎれもない温泉神社である。
代々の領主をはじめ近郷庶民の崇敬厚く、最上義光による社領や酒井家による社殿造営等数々の寄進があった。
現在の社殿は安永年間(1775ころ)の造営といわれる。
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